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いろいろ色のはじまり

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いろいろ色のはじまり
毒の緑、宝石の青に花の赤。めくるめく色たちの歴史
摩訶不思議な色のお話。化学者で鉱物を愛する著者の田中さんが、石や貝、草花から色をつくりながら、大昔の色、そして今の色までをご案内。私たちが便利につかう、色鉛筆や絵の具、マーカー、染料を手にするまで。それは、知られざる化学の歩み、歴史でもありました。*付録一枚絵 特製<幻の色たちポスター>つき。月刊誌から6色追加の豪華版です。ミイラの茶色、毒の緑に宝石の青など全70色

自然の中をめぐりながら古今東西の「色」の世界を探求する『いろいろ色のはじまり』は、2023年に月刊絵本「たくさんのふしぎ」の10月号として刊行され、大きな反響を呼んだ1冊です。待望のハードカバー化(5月刊行予定)に際し、化学者で鉱物を愛する著者、田中陵二さんが刊行当時に書かれたエッセイを再録してお届けいたします。

田中 陵二 文・写真


26×20cm
40ページ

福音館書店


忘れられた色をつくる
田中陵二

人間は色が大好きです。文字を考え出すずっと前から、石から色をとり出し、洞窟の壁画などをぬっていました。そのうち、人間の色に対する思いはどんどん深くなり、性能が高く美しい色をもっと自由につかいたくなり、色のもとになる石や草花を調べて、色のからくりを探っていきました。これが今の「化学」のはじまりです。そこで私も、庭で古い色をひとつずつ、昔のやり方で作ってみることにしました。


実際にやってみると、予想よりずっと難しいことがわかりました。例えばプルシアンブルーでは、牛の血をやいたものにローハを混ぜるとできると本にはあるのです。でも、このとおりにガラスの試験官で焼いてやってみても青くなりません。これは、明治時代の本を読んで、やっと原因がわかりました。鉄のかまをつかっていて、このかまがすり減って、プルシアンブルーの鉄分になっていたのです。そこで、鉄さびを加えたら、やっときれいな青になりました。


朱を探すのは、もっとこわい問題がありました。北海道の道の無い山に入るのですが、新しい大きな親子のヒグマの足跡がそばについていて、すぐそばにヒグマがすんでいるのは明らかです。子連れクマにあったら大けがどころではすみません。笛をふいて石を叩きながら、クマが来ないよう祈りながら朱をやっと見つけました。

植物染料の古いレシピはうまくできていて、その大部分は化学反応なのがわかりました。藍を溶かして布を染めるのも、ベニバナの花の色をもらうのも。でも、そんな化学のからくりは昔の人は知りませんから、試行錯誤して見つけたのでしょう。どういう方法で見つけたのかはわかりませんが、うまくやったなぁ、と感じます。

私は化学者です。毎日、フラスコの中で薬品を反応させて、今まで誰も作ったことのない物質や色素を作っています。そんなときに、昔の人がどう苦労したのか、どうやって多くの知識をためていったのかを思います。科学はつみかさね。古いたくさんの経験や知識の上に、今の科学ができあがっているのです。
(「たくさんのふしぎ」2023年10月号「作者のことば」より)

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